黄素妙論　時節善悪の弁

黄帝こうてい問とふて曰いわく。

　男女だんじょ令²婚合こいごう¹に時莭じせつの善惡ぜんあく交まじわる所ところの吉凶きっきょうありや。

素女そじょ答こたへて曰いわく。

　　天地てんち震動しんどう、大風おほかぜ、急雨きゅうう、雷電らいでん、晦みそか、朔ついたち、大寒だいかん、大暑たいしょ、日蝕にっしょく、月蝕げっしょく

　　庚申こうしん、甲子きのへね、立春りっしゅん、立夏りっか、立秋りっしゅう、立冬りっとう、春分はるわけ、秋分あきわけ、夏至げし、冬至とうじ、

　　五月がつ五日か、右みぎ此この日ひは必かならず交合こうごうすべからず、若もし誤あやって交合こうごうする時ときは

　　其その壽じゅをうばう。神社佛閣じんじゃぶっかく、聖賢像前せいけんぞくぜん、井いど、竈かまど、日月光下じつげつこうか、以上いじょうの

　　此所かしょにて交合こうごうすべからず、誤あやまって交まじはる時ときは鬼神必きじんかならずその身みに禍わざわひ

　　を成なす。

　　憂愁ゆうしゅうに心こゝろをつくしたる時とき、忿怒ふんどに氣てを逆登ぎゃくどせしめたる時とき、久行久きゅうこうきゅう

　　立りつして筋力きんりょくを盡つくしたる時とき、飮酒飽食いんしゅほうしょくして脾胃ひかを苦くるしまたる時とき、諸しょ

　　病びょう此この頃ころ癒いえて血氣けっき未いまだ調とゝのはざる時とき、生うまれて未いまだ一ヶ月げつにも滿みたざ

　　る時とき、以上いじょうの如ごとく此この節せつに交合こうごうすべからず、若もし誤あやって婚合こいごうする時ときは血けつ

　　氣て破やぶれて筋骨乾きんこつかわき大病たいびょうとなる。深ふかく可　愼つゝしむべし、又また女おんな髪かみ黄こん色しょくに面おもての

　　色いろ甚はなはだ黑くろく、眉高まゆたかく肉荒にくあれて極きわめて疲つかれ、男子だんしよりも年長としたけ、産さん

　　して身涸みかれ、しめりなく、心こゝろ甚はなはだ猛たけく、男おとこの聲こえの斯ごとくく、腋わきの下した

　　臭くさく、玉門ぎょくもん乾かわき澁しぶり白滯こしけ、赤滯げつけいなどある女おんなに稀まれにも交まじはるべから

　　ず思おもはざる時ときに交合こうごうせしむる時ときは男子だんし實たからを損そんずる也なり。可愼つゝしむべし。

　　可愼つゝしむべし。

医心方槇佐知子（翻訳）に前書きに
「本書の理念の根底は陰陽五行思想に基づき、易や道教、陰陽道、天文学などによって人の行動が規制されていた」とある。医心方にも、「第二十四　禁忌」に同様のことが書かれている。
医心方は理由別に纏められ、犯すと何が起こるかなどより詳しく書かれている。黄素妙論の方が多い様に思う。
多いところは、日本の神道や仏教の考えが入っているのだろうと想像する。

日時や場所は、このように宗教などの影響から来ているものだろうから、それら信仰する人は気をつけましょう。
これといった信仰を持っていないもだからあまり興味を引かない。

ただ、暴飲暴食をした後は避けるべきなのは納得がいくところ。
食べた後に、ジョギングをする人は殆どいないだろう。腹ごなしに走ると言う人もいるだろうが体には良いとは思えない。
昔のコントネタではないが「父ちゃんが酔っ払って帰ってきて仕込んだから、こんなろくでもねぇ息子が出来たんだ」のような話の元になるのだろう。

　　