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女閨訓 序-1

今日は最初の序の半分を書きます。
元本 (昭和19年)
女閨訓(全) 序
現代訳
女閨訓 (全文) 序
   諸君※
 往昔おうむかしより女大学を始めとして女庭訓1、婦徳2女子の本文、妻たるの道を教え示せる書は枚挙にいとまあらず。しかれども未だかつて閨房裡3の女子の心得にきては親切に之を説き示せる書、はなはすくなし。
  皆さん
 おお昔より「女大学」を始めとして「女庭訓」、「婦徳女子の本文」など、妻としの道を教える書物はたくさんあり過ぎて数え切れないが、今まで一度もベッドマナーに付いて親切丁寧に説明した書物は見当たらない。
  1. 庭訓、論語の古事から家庭の教育や教訓。
  2. 女子の守るべき徳義。
  3. 閨房:寝室。ねや。(閨一字も同様の意あり) 裡:~の内
 仮令たとえありとするも。所謂春画淫本の類にして、真面目に此の人倫4の大道を説けるものは殆ど之を見る事なし。例え有ったとしても、春画猥褻本のたぐいであって、真面目に寝室での夫婦間の心得を説いたものは殆ど見たことがない。
  1. 夫婦間の秩序
 れ閨房は男女両性相抱>あいいだきてし、妻が情炎の坩堝るつぼに夫の精根を溶かし、大にしては以て人間子孫の大業を立て、小にしては実に一家和合の微妙なる根本を為す所なり。閨房とは夫婦が仲睦まじく抱き合い、妻の情念のルツボに夫の精根を溶かしこみ、大は、子孫を残す大事業を行い、小は、実に家庭の穏やかな調和を生む微妙な根本を作る。
 太古は此の道公明に行われいささかいやしむ風なかりものなり。太古、これは公明に行われ、恥や卑しむことは微塵もなかった。
 我が国開闢かいびゃくの始め諾冊だくさつ5二柱の神が八尋殿やひろどの6に於て男神おがみ 先ず唱へ、女神めがみ之に和して寝処みと交合まじあいを為せし事は、古事記にも明に記す所なり。孟子もまた、男女むろに居るは人の大倫たいりん7也と教へ何人も其の事の当然なるを怪しむ者なかりき。我が国かいびゃくの始め、イザナギとイザナミの2神が広い御殿に於いて、先ず男神のイザナギが声をかけ、女神のイザナミがこれに応じて寝所で交わる事は古事記に書かれていること。また、孟子も男女が寝室を共にすることは、人として行う人倫の大道と教え、どんな人でもその事を当然とし怪しむ人はいない。
  1. 諾」伊弉諾尊(イザナギ)のこと。神話の男神。「冊」:伊弉冉尊(イザナミ)のこと。神話の女神でイザナギの妻。
  2. 幾尋もある広い御殿。
  3. 人として踏むべき人倫の大道。
 然るに中古に及び文物次第に盛なるに及びて風俗いたずらに形式の礼8はしただ其の相抱あいいだ けるていみにくきがゆえもって、之をいやしむべきものべきものとかんずるに至り、之を口にするをはばかるのみならず、此の大道をおこなふ事を以て窃盗のわざすが如く、只官ひたすら人に秘め隠し些かも外に洩れんことを怖がるゝが如き風になれり。何ぞ其の誤れるのはなはだしきや。それなのに、時代が流れるに従い、書画などが多く出回り様になると風俗は悪戯に形ばかりの形式に走り、ただ抱き合うだけの醜くさゆえに、これを賎しいこと、恥じるべきのもと感じ様になり、これを口に出すことのみならず、この大道を行うことは、泥棒をすることと同じように扱われ、ひたすらに内に秘めて隠し、わずかでも人に知れることを怖がる様になった。これは大いなるあやまちだ。
  1. 礼儀作法や儀礼の意味の他に家、地域などの作法など広い意味もある。
 再び云う、夫婦相交るは人倫の大道なり。ほしいままに人の女を犯し、人の妻を奪わんことこそ恥として隠れても行はざれ、我が夫と共に臥し、我が妻と共に楽しむに何のおそかくゝ事あらんや。隠れて事を行はんずる時、必ず邪悪のより て乗ずる処となる。即ちこれよりは表面こそ謹厳きんげん)端正たんせいを装ひたれ、閨裡の人倫は大いに乱れ、邪淫じゃいん9かえって、其の芽を発し遂に男子は隠然として多妻の風を生じ、女もまた従つて我がつまならむつまを重ねる等の事ようやくしげくなり、其の風延いて今日に及ぶに至れるなり。もう一度言います。夫婦が交わることは人倫の大道です。欲しいままに人の女を犯したり、人妻を奪おうとすることこそ恥で、隠れても行ってはなりません。我が夫と共に寝、我が妻と楽しむのに何の恐れや隠す必要があるでしょう。隠れて行おうとすると、必ず邪悪な思いが首をもたげることになります。即ち、これよりは表を謹厳端正に装うとも、夫婦生活は大いに乱れ、邪淫が返ってその芽を出し、遂に男は陰に隠れて妾を持つ。また、女もこれに従い我が夫なのに夫でない関係などを重ね漸く繁くなる。このようなことが続き今日になった。
  1. 仏教用語。配偶者以外の者との性行為。または、してはならない性行為。

※江戸の艶道を愉しむ―性愛文化の探究 蕣露庵主人著 によると書出しは「諸君」で始るようだ。
  昭和40年代前半の青春ドラマに活発な男勝りの女性が使っていたフレーズを思い出した。
  今は使われない呼びかけが新鮮さを感じたので追記した。
 
 
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